キリストの心(教会だより2023年3月号)
2023.3.16

「神の言葉に生きる」
マタイによる福音書4章4節

イエスはお答えになった。「『人はパンだけで生きるものではない。神の口から出る一つ一つの言葉で生きる』~マタイによる福音書4章4節~

神の言葉は必要な糧を私たちに与えてくださる祝福の糧として、感謝して頂きなさいということを私たちに教えます。与えられたものとして、感謝を顕しなさいと言います。しかしそれよりも、自分の力を使って、世界の食糧問題を解決したほうが、よっぽど神様の御心を行っているではないかと思わないでしょうか。そのように思わせる悪魔の誘惑がありますが、もちろんここで主イエスは食べることを否定して、神様の御言葉だけを聞きなさいと言っているのではありません。

問題は自分の力を歯止めなく発揮さえすれば、解決できるという希薄さにあるのです。自分が力を発揮すれば、空腹が満たされ、食糧問題はなくなるという結果論だけに固執してしまい、その本質が問われてきます。人間、手段を選ばなくなると、雑になってきます。極端な話、食べ物さえあれば大丈夫だろう、という感覚に陥り、食品偽造の問題なども出てくるでしょう。手段を選ばず、自分の価値観で都合のいいように力を発揮して、食料を得るところに、そのような大きな問題が後になって見出されてくるのです。

神の言葉はその自分の価値観や正しさに危機を促し、命を与えてくれる食料の恵みに気づかせ、食料が与えられればいいという結果論に固執する私たちの思いを解放し、真に生きることができる命の御言葉です。ただ命を持続させるための食糧だけで私たちは生きているのではなく、その命を発揮するため、命を使うためのエネルギーとなる大切な食料を恵みとしていただくということを神の言葉は私たちに告げるのです。

(六本木ルーテル教会牧師 藤木智広)