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招聘の手引き

1995年5月31日 信仰と職制委員会
(2004.02.21)



はじめに

 招聘の歴史的、神学的な考察については、すでに『教会だより』に委員長柴田が発表をしているので、ここでは、具体的な日本ルーテル教団の招聘のやり方の手引きが考察されている。この考察のきっかけになったのは、委員会に、1)ある地域教会から、招聘のやり方にかかわる問いかけがあったことと、2)各地で牧師交替期に問題が起こった歴史を率直に認め、招聘にこそ教会の神学が集中的に表現されていることを覚え、この重大な教会の行為に支障が生じないように一定の理解をお互いにしておくことが必要だと、委員会では判断したからである。実際の作業は委員長柴田があたり、委員会にその中間発表をしつつ、共同討論に付して委員会としての結論に達したものが、本案である。


序論:日本ルーテル教団(以下NRKと呼ぶ)における招聘の現状

 NRKでは招聘母体が2つある。ひとつは各地域教会であり、他は教団である。前者の場合、その教会と被招聘権のある牧師の問で招聘が起こる。後者の場合、教団と被招聘権のある牧師との間で招聘が起こる。ただし、後者の場合、特別な場合を除いては、現時点で招聘されていない牧師を教団が招聘し、無牧の状態にある教会(あるいは経済的自給ができていない教会)に、一定の条件をつけて派遣するということである。その意味では、教会の成長を期待し、その教会の自給達成を派遣牧師をとおして助けるということになろう(特別な場合とは、傘下の学校などのチャプレン、神学教師、教団レベルでの計画、といったことである)。ただし、まったく例外として、神学院の新卒業生の招聘がある。この場合、本人への直接招聘はゆるされず、常議員会が委託を受けて、招聘作業にあたる。それは3月末にならないと、卒業が最終的には確定しない以上、卒業前には卒業予定者には被招聘権がないからである。現実に3月末の時点で、卒業が延期されることも可能性としては存在する。
 以上2つの場合でも、招聘の内容(職務内容)ということになれば、そこに相違があるわけでなく、教団の方策的なことからきているやり方の相違と言ってよいだろう。ただし、不断に開拓伝道が必要である教団の現状では、伝道の推進のために教団による招聘が不可欠であり続けるであろう。この場合の牧師は『派遣牧師』であるより、一定のプロジェクトのために教団より招聘された牧師という内容になるだろう。また、本手引きでは、海外からの派遣宣教師は扱っていないが、現在の宣教師派遣は、プロジェクトにのっとったNRKの要請による派遣である。


1.どこから始まるか。

この手引きでは各個教会の招聘のことを考えるが、その場合でも、教会が自給教会になり、初めて招聘をする場合については、3.以下に従ったらよい。この手引きでは、まず、現在の牧師が辞任、転出する場合、どうするかを扱う。辞任と転出の希望が現任の牧師から出される場合の時期のことを最初に考えてみたい。具体的な移動がなされるのが通常3月とすると、そこから遡ると、少なくとも半年前に出されるのが望ましい。これは、教団において、招聘候補のリストを、招聘希望教会に提示するための期間もそれくらい必要だ、という想定をしているからである。また、牧師交替のための準備期間を半年と考えるのが現実的であり、まず妥当だと思うからである。
 しかし、それはどうのように表示されるべきであろうか。牧師から教団に内々裡に伝えればそれでよしとするべきか。教会にまず伝えるべきか。神学的に言えば、招聘には特別の場合を除いては期限付きの招聘は無い以上、その招聘の終了については、まず教会に知らせる責任を牧師は負うと考えるべきであろう。
 ただし、他教会から突然招聘がでる場合、こうした期間の余裕がない場合も想定できる。極端に言えば、3月に突然、離任が起こるということになるかもしれない。それを考えれば、1月中に教団傘下の教会の人事は終了する、という共通の理解が全体にあることが望ましい。


2.

教会は牧師から、辞任、転出の希望が表示されたなら、その意思を確認し、必要であれば再考を求めても、牧師にも辞任、転出の自由があることを認めねばならない。しかし辞任の受理は、会員総会でなされるべきである。招聘が全会員の決定であった以上、当然のことである。そこで辞任の『時期』が明確にされなければならない。新牧師の招聘がただちに決定されたとしても、赴任までの紆余曲折を考えれば、無牧状態が生じる可能性があるからである。


3.

次になされることは、役員会とは別に、招聘作業のための委員会の構成と発足である。役員会は実務的な最終決定機関である以上、いきなり役員会が牧師の選定や、招聘交渉に入るのは避けるべきであろう。一回の選定や交渉ではおさまらず、何回もの作業になる可能性も考えれば、役員会という最終決定機関とは別の作業委員会がこれにあたるのがよい。後任牧師問題は、経済的問題、牧師館の規模など、審議すべき事柄が多様であるし、再検討の必要も生じるだろう。だから、作業委員会から提案というかたちで役員会に出ることが望ましい。そして、この招聘作業委員会の委員になる信徒は、教会とはなにか、牧師職の内容、ルーテル教会の基本にたいする理解をきちんともった公平な人々であるべきで、5名前後で構成されたらよいだろう(これは教会の規模にもよるが、あまりの小人数では意見の公正を期待できないからである)。


4.

ここで問題になるのは、前任牧師(この時点ではまだ当該教会の牧師)が、招聘作業委員会に入るべきか、または、入らないまでも、アドバイザーとして招聘作業を助けるべきか、ということである。結論から言えば、それは有り得ない。前任牧師が意識的にしろ、無意識的であれ、その影響力を行使するなら、招聘作業がスムーズになるより、政治的なものになってしまう恐れがある。いやでも相談を受けることになる場合でも、自分の個人的な判断を尺度にしてはならない。相談相手、もしくは招聘指導をする立場にあるのは、現在の教団の構成と大きさから言えば、全体を把握している宣教総主事か、地区議長か、地区選出常議員であろう。さもなくば、近隣の牧師を教団が指名するのも、一策かもしれない。


5.委員会のするべきこと。

教団から、被招聘の資格者名簿をもらう。その資格者についての客観的データの確保(年齢、経歴、専門性、家族構成と状況など)。新牧師に提示できる自分たちの教会活動プログラムの作成と希望。その上で人選にはいる。


6.招聘候補牧師との話し合い。

これは一番デリケートであり、失敗すると後遺症が残る場合もあるので慎重の上にも慎重でなければならない。説教に来てもらう、逆に説教を聞きに行く、ということもある。しかしその一回ですべてがわかるものでない以上、これが最上の方法とも言えない。委員会でアンケー卜を用意し、それに答えてもらうという方法、伝道方法、家族形態などを、客観的に知ることだろう。また逆にこちら側の状況を、きちんと伝え、招聘についての判断材料を提供することも重要である。こう考えると、教団の指導ではなく、その補助的役割が大切になると思う。


7.

候補者がしぼられたら、それを会員会に提出するのではなく、役員会に報告し、役員会から役員会提案というかたちで責任をもって会員会に提示する、というプロセスが望ましい。役員会からもう一度、委員会に差し戻すことも十分あり得るからである。招聘委員会は、あくまで作業委員会であって、答申はするが、決定委員会ではない。


8.

役員会で結論が出たなら、それを会員総会にかける。投票権のある会員全員にゆきわたるようにする。なぜなら、招聘の決定は多数決ではなく、全員の賛成が求められるからである。この点、NRK傘下の教会に、憲法も規則もない教会があることは、非常に不可解なことである。そこにこそ、これらの基本が示され、信徒の訓練がされていなければならない。ただし、実際には、全員一致ということに到達できないかもしれない。その場合は、招聘は成立しないのだろうか。そうではない。例えば多数が賛成した上で、それについて、反対者の賛同を得ることはできることである。


9.

以上のプロセスを経て、所定の招聘状が送付される。被招聘者は、招聘状を受理したら、まず受理したことを招聘教会に伝える。そして、短期間のうちに返事をしなければならない。また、招聘を受け入れることを決心したなら、ただちに返事をする。また断る場合も同じである。ただちに返事をする。受理の場合、赴任を長期間にわたってのばすことは許されない。なぜなら、それは相手の招聘権を束縛してしまうことになるからである。軽率な振る舞いは、招聘がもつ神学的な重さを軽視することにほかならない。


10.

いずれにしても、招聘全体を導くのは聖霊であることを、教会も牧師も深く理解していなければならない。聖霊を汚すことは許されないのである。また招聘には、その教会(教団)の神学が集中していることを忘れてはならない。招聘を軽率に扱うことは、教会自身の神学を軽率に扱うことであり、教会の成立を危うくさせることになる。



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